中国建材ニュース｜山東省が建材業界の2024年～2026年変革・改善行動計画を発表──技術革新と設備更新の重点を明確化

包括的な行動計画で業界全体の転換を推進

山東省工業情報化局は、省の建材産業のグリーン、低炭素、高品質な発展を促進するため、「山東省建材産業変革改善行動計画（2024～2026年）」を発表しました。この計画は、中国の建材産業が直面する構造的な課題に対する地方政府レベルでの包括的な対応策として注目されています。

2026年までの具体的な数値目標

産業成長目標

産業付加価値の年平均成長率約2％
過去の高度成長期と比較すると控えめな数字に見えますが、これは「量から質への転換」を重視した現実的な目標設定です。無理な拡大ではなく、持続可能な成長を目指しています。

デジタル化の目標

主要プロセスの数値管理率

• セメント産業：70％以上
• セラミックス産業：70％以上
• 板ガラス産業：相応の水準

これは、製造プロセスの主要部分をセンサーやIoTデバイスでリアルタイムに監視・制御し、データに基づいた最適化を実現することを意味します。

エネルギー効率の目標

エネルギー効率ベンチマークレベルを上回る生産能力の割合

• 板ガラス業界：30％
• 建材業界全体：20％

「ベンチマークレベル」とは、同業界における最高水準のエネルギー効率を指します。この目標達成により、業界全体のエネルギー消費量が大幅に削減されます。

後進設備の淘汰

エネルギー効率基準レベル未満の生産能力
技術改造が完了しない場合は、2026年までに廃止する方針です。これは強制力を持った政策であり、企業に設備投資の決断を迫るものです。

山東省建材産業の現状と課題

伝統的な優位性

山東省の建材産業は、中国国内でも有数の規模と競争力を持つ伝統的に有利な産業です。

産業規模の大きさ
中国全体の建材生産量に占める山東省のシェアは高く、特にセメント、板ガラス、セラミックスの生産量は全国トップクラスです。

高い集積度
主要な建材製品の製造拠点が省内に集中しており、サプライチェーン全体が形成されています。

比較的高い技術水準
一部の企業は国際的にも競争力のある技術を保有しています。

直面する課題

しかし、急速な発展の後、長期にわたって蓄積された構造的矛盾が徐々に表面化しています。

伝統的製品の過剰生産能力
特にセメントとセラミックスの分野で、需要を大幅に上回る生産能力が存在し、価格競争の激化と収益性の悪化を招いています。

低い企業効率
過当競争により、多くの企業が低収益またはマイナス収益で操業しています。

発展の弱い勢い
新製品開発、新技術導入、新市場開拓などの面で、革新的な動きが不足しています。

7つの重点分野と18の重要タスク

行動計画は、以下の7つの重点分野に焦点を当て、18の具体的なタスクを提示しています。

①技術革新能力の強化と大規模な設備更新の促進

主要な共通技術の開発
業界全体に恩恵をもたらす基盤技術の研究開発を推進します。

イノベーションプラットフォームの構築強化
大学、研究機関、企業が連携した研究開発拠点を整備します。

先進的な設備の更新促進
古い設備を最新の省エネ・高効率設備に置き換えることを奨励します。

主要プロジェクトの構築加速
戦略的に重要な大型プロジェクトを優先的に推進します。

②デジタルエンパワーメントの促進とデジタルインテリジェンスのレベル向上

デジタルトランスフォーメーションの加速
IoT、ビッグデータ、AIなどのデジタル技術を製造プロセスに統合します。

スマート工場の構築
人間の介入を最小限に抑えた自動化・知能化された生産システムを実現します。

③二重炭素目標の実施促進とグリーン変革・開発の加速

省エネルギー技術の導入
エネルギー消費を削減する先進的な製造技術と設備を導入します。

再生可能エネルギーの活用
太陽光発電、風力発電など、クリーンエネルギーの利用を拡大します。

炭素排出削減
製造プロセスからのCO2排出を削減する技術を開発・導入します。

④グリーン建材市場の認証・申請と範囲拡大

グリーン建材認証の取得促進
環境負荷の低い製品に対する公的認証の取得を支援します。

市場の拡大
政府調達や公共事業での優先使用を通じて、グリーン建材の市場を拡大します。

⑤産業チェーンの延長と有利な産業クラスターの強化

川上・川下の統合
原材料から最終製品まで、産業チェーン全体の最適化を図ります。

産業クラスターの育成
地域の特性を活かした競争力のある産業集積を形成します。

⑥産業ガバナンスのレベル向上と標準化された秩序ある発展の促進

業界標準の整備
製品品質、環境基準、安全基準などを明確化します。

監督体制の強化
違反企業に対する監督と罰則を強化します。

⑦その他の支援策

企業への財政支援、人材育成、国際協力の促進などが含まれます。

産業別の技術革新重点

セメント産業

セメントキルン代替燃料技術
従来の石炭に代わり、廃棄物や生物燃料を活用することで、CO2排出と燃料コストを削減します。

内部循環沸騰焼成技術
熱効率を向上させ、エネルギー消費を削減する新しい焼成技術です。

省エネ設備の導入

• 低抵抗サイクロン予熱器：熱交換効率を高め、燃料消費を削減
• 高効率火格子冷却器：クリンカーの冷却効率を向上
• 高度な省エネ粉砕技術：セメント粉砕のエネルギー効率を改善

プロセス改革

• ローラープレス原料粉砕技術：従来のボールミルより省エネ
• セメント包装の自動化：労働生産性の向上

主要プロジェクト

• セメント沸騰および焼成クリンカー生産ラインの建設
• 炭素固定鉱物材料用セメント生産ラインへの転換

板ガラス産業

新製品の研究開発加速

• ペロブスカイト/テルル化カドミウム薄膜電池TCOガラス：次世代太陽電池用ガラス
• 高級自動車用三層銀Low-Eコートガラス：断熱性能に優れた高級ガラス

製造技術の研究強化

• 強化真空ガラス製造装置：高断熱性ガラスの製造技術
• 省エネ性の高いガラス製造技術：エネルギー消費を削減

設備更新

• 1つの窯に複数のラインを備えたフロートガラス生産システム：生産効率の向上
• 新エネルギー代替技術：天然ガスや電気への燃料転換
• オンライン品質検査技術：リアルタイムでの品質管理

主要プロジェクト

• 太陽光発電用圧延ガラス生産ラインの建設加速：山東省のガラス産業の弱点を補強

セラミック産業

プロセス技術のブレークスルー

• 乾式粉末化技術：水を使わない環境に優しい製造プロセス
• 原料調製制御システム：原料の配合を精密に制御
• ロボットによるグラウチング、トリミング、グレージング：自動化の推進

先端材料の研究開発

• ナノアルミナ製造技術：高機能セラミックスの基礎材料
• 透明セラミック基板製造技術：電子デバイス用途
• 機能性セラミックス：特殊な機能を持つセラミックス材料

設備更新

• 連続ボールミル：効率的な原料粉砕
• 高効率噴霧乾燥タワー：エネルギー効率の向上
• 連続ロールフォーミングシステム：生産効率の向上
• ハイエンドデジタルインクジェットプリンタ：高精細な装飾
• 効率的なインテリジェント研磨機：表面仕上げの自動化
• インテリジェントピッキングシステム：物流の効率化

新プロセス技術

• 新たな乾式粉末プロセス技術：環境負荷の低減

主要プロジェクト

• グリーン建材セラミック床舗装
• セラミックインク生産ライン
• 高シリカ尾鉱を利用した耐摩耗性アルミナセラミック粉砕体のインテリジェント製造デモンストレーション生産ライン

先端材料分野の強化

山東省は、特殊ガラス、炭素繊維および複合材料、グラフェンなどの主要分野における科学研究を強化する方針です。これらは、航空宇宙、エレクトロニクス、新エネルギーなど、次世代産業の基盤材料となります。

安全生産の強化

行動計画は、安全生産にも重点を置いています。以下のような先進設備の導入を推進します。

• インテリジェントグラブクレーン：重量物運搬の自動化と安全性向上
• キルン赤外線燃焼温度測定画像システム：異常の早期発見
• 天然ガスオンライン監視装置：ガス漏れの即時検知
• インテリジェントな保管および輸送システム：事故リスクの低減
• インテリジェントな管理および制御システム：統合的な安全管理
• 安全連動システム：異常時の自動停止機能

日本企業への示唆

山東省のこの包括的な行動計画から、日本企業が学ぶべき点と、ビジネスチャンスを見出すべき点があります。

地方政府の強力なリーダーシップ

中国では、地方政府が産業政策を主導し、具体的な数値目標、技術の方向性、プロジェクトの優先順位を明確に示します。企業はこの方針に沿って投資判断を行うため、政策の動向を注視することが重要です。

設備更新需要の拡大

2026年までに後進設備を淘汰するという強制力のある政策により、省エネ・高効率設備への大規模な更新需要が発生します。日本が強みを持つ精密機械、制御システム、計測機器などの分野で、ビジネスチャンスが拡大する可能性があります。

デジタル化・自動化への投資加速

主要プロセスの数値管理率70％という目標は、IoTセンサー、制御システム、データ分析ソフトウェアなどへの大規模な投資を意味します。日本企業が持つFA（ファクトリーオートメーション）技術は、中国市場で高く評価される可能性があります。

環境技術へのニーズ

CO2排出削減、省エネルギー、クリーンエネルギー利用など、環境技術への需要は今後さらに高まります。日本の環境技術は世界トップレベルであり、この分野での協力は相互にメリットがあります。

先端材料分野での協力可能性

炭素繊維、特殊ガラス、機能性セラミックスなど、日本が強みを持つ先端材料の分野で、技術提携や共同研究開発の機会があるかもしれません。

まとめ

山東省の「建材産業変革改善行動計画（2024～2026年）」は、中国建材産業が直面する構造的課題に対する包括的かつ具体的な対応策です。量から質への転換、デジタル化の推進、環境対応の強化、先端材料への展開──これらすべてが、今後の中国建材産業の方向性を示しています。

日本企業にとって、この変化は脅威であると同時にチャンスでもあります。中国市場の動向を正確に把握し、自社の強みを活かした戦略で臨むことが、成功の鍵となるでしょう。

HONG KONG JCBO LIMITED（香港佳士博有限公司）
中国建材市場の最新動向を常に把握し、日本企業の成功をサポート