中国建材ニュース|中国国家建材有限公司の魏如山社長:安定成長という目標を重視し、高品質な発展を追求する
セメント産業が直面する深刻な課題
2024年6月26日、「2024年セメント産業高品質発展会議」において、中国国家建材グループ副総経理兼中国国家建材有限公司社長の魏如山氏が、中国セメント産業の現状と今後の方向性について率直な見解を表明しました。
魏氏は冒頭、業界が直面する根本的な課題について次のように問いかけました。「安定成長、過剰生産能力の削減、最適化とアップグレード、二酸化炭素排出削減など、セメント産業の主要な命題は根本的に解決されていない。今後5年か10年でどうすべきか?我々は協力して答えを探す必要がある」
この発言は、中国最大の建材企業グループのトップが、業界全体の構造的な問題を認識し、危機感を持っていることを示しています。
過去3年間の厳しい状況
魏如山氏は、過去3年間のセメント業界の状況を振り返り、以下のように分析しました。
マクロ経済の変化と構造矛盾の顕在化
マクロ経済循環の変化とセメント業界に蓄積された長期的な構造矛盾が絡み合い、業界の矛盾はますます顕著になっています。不動産市場の低迷、インフラ投資の減速などにより、セメント需要は大きく減少しました。
事業運営の困難化
需要減少に対して供給過剰の状態が続き、価格競争が激化。多くのセメント企業が事業運営に困難を抱え、赤字に陥る企業も増加しました。
利益の大幅な減少
業界全体の利益は大幅に減少し、かつては高収益を誇ったセメント産業が、厳しい経営環境に直面しています。
2024年の一層の悪化
今年に入ってからは状況がさらに厳しくなり、セメント市場は5月まで回復の兆しを見せませんでした。通常であれば春先から建設シーズンが始まり需要が回復するはずですが、2024年はその回復が大幅に遅れました。
短期的な安定と長期的な高品質発展への3つの提案
魏如山氏は、セメント産業が短期的に安定した成長を維持し、長期的に高品質で発展するために、3つの重要な提案を提示しました。
①業界の地位向上と全体利益の重視
業界全体の利益に焦点を当てる
個別企業の短期的な利益追求ではなく、業界全体の長期的な健全性を最優先に考える必要があります。過度な価格競争や市場シェア争いは、結局すべての企業にとってマイナスとなります。
安定した成長を維持
急激な拡大や無理な増産ではなく、需要に見合った適切な生産水準を維持することで、安定した成長を目指します。
協力の強化
競合他社であっても、業界の健全な発展のためには協力が不可欠です。価格協調、生産調整、技術革新の共有など、様々な面での協力体制を強化する必要があります。
②供給側の管理レベル向上
需要と供給のバランス
現在、需要と供給の深刻な不均衡がセメント産業の健全な発展を制限する主要な矛盾です。特に供給側に問題が集中しており、供給側の改革が急務となっています。
ダイナミックバランスの実現
需要の変動に応じて、供給を柔軟に調整するメカニズムを構築する必要があります。需要が減少する時期には、生産を適切に抑制し、需要が回復した時には迅速に対応できる体制を整えます。
過剰生産能力の削減
根本的な解決策は、過剰生産能力の削減にあります。古い設備、エネルギー効率の悪い設備、環境負荷の高い設備から優先的に淘汰していく必要があります。
③大企業による模範と責任
大企業グループの役割
中国国家建材グループのような大企業グループは、業界をリードする立場として、自らが模範を示す責任があります。
新規生産能力の厳格な管理
過剰生産能力がすでに問題となっている状況で、新規の生産能力を増やすことは業界全体にとってマイナスです。大企業は新規生産能力の追加を断固として抑制し、他の企業にも同様の行動を促す必要があります。
後進生産能力の排除強化
技術的に遅れた設備、環境基準を満たさない設備を積極的に廃棄し、業界全体の生産能力の質を向上させます。
世界のセメント産業から学ぶ教訓
魏如山氏は、世界のセメント産業の発展の歴史を振り返り、重要な教訓を指摘しました。
「セメント産業は需要減退期に直面した際、効果的な供給側管理を通じて、『利益を減らすことなく量を減らす』という業界パターンを達成できる」
これは、欧米や日本のセメント産業が経験した道です。成熟した市場では、需要が減少しても、企業間の協調により生産量を適切に調整することで、価格を維持し、利益を確保することが可能です。
中国のセメント産業も、この段階に入りつつあります。需要の減少は避けられない現実ですが、それを破壊的な価格競争の引き金とするのではなく、業界が成熟するための契機とすることができるのです。
業界のコンセンサス形成が急務
魏氏は、この点に関して業界のコンセンサスをさらに深める必要があると強調しました。
すべてのセメント企業の責任
現在、すべてのセメント企業、特に大企業はセメント産業の健全な発展に責任を負っています。これは単なる企業利益の問題ではなく、国家経済の安定、雇用の維持、サプライチェーンの健全性に関わる重要な課題です。
強大な国家への責任
中国が世界第二の経済大国として、また製造業大国として発展していく中で、基幹産業であるセメント産業の健全性は極めて重要です。企業は短期的な利益だけでなく、国家全体の発展に対する責任を自覚する必要があります。
地位の向上と自信
セメント産業に携わる企業と従業員は、自らの仕事の重要性を認識し、誇りと自信を持つべきです。同時に、業界の課題を直視し、改革に取り組む決意が必要です。
団結と協力
業界内の企業が団結し、協力することが何よりも重要です。個々の企業が短期的な利益を追求して競争するのではなく、業界全体の長期的な繁栄のために協力する文化を醸成する必要があります。
日本企業への示唆
この魏如山氏のスピーチから、日本企業が学ぶべき点がいくつかあります。
中国セメント市場の構造的変化
中国のセメント市場は、成長期から成熟期への転換点を迎えています。今後、新規需要の大幅な増加は期待できず、既存設備の更新や品質向上が中心となるでしょう。
日本企業がセメント関連の設備、技術、サービスを中国市場に提供する場合、大量生産用の新規プラントではなく、省エネルギー、環境保護、品質向上、自動化・デジタル化といった分野に注力すべきです。
業界再編の加速
過剰生産能力の削減が本格化すれば、中小企業の淘汰と大企業による統合が加速します。生き残る企業は、技術力、環境対応力、財務基盤に優れた企業です。
日本企業は、こうした優良企業との提携を強化し、長期的な関係を構築することが重要です。
環境技術へのニーズ
中国政府は「二酸化炭素排出削減」を重要な政策目標としています。セメント産業は中国全体のCO2排出量の約15%を占める大排出源であり、排出削減技術への需要は今後急速に高まるでしょう。
日本が強みを持つ省エネルギー技術、排ガス処理技術、代替燃料技術などは、中国セメント産業にとって重要なソリューションとなります。
品質向上への転換
量から質への転換が進む中で、高品質なセメント、特殊用途セメント、高機能セメントへの需要が増加します。日本のセメント産業が培ってきた品質管理技術、試験・分析技術は、中国企業にとって価値があります。
まとめ
中国国家建材グループという業界最大手のトップが、ここまで率直に業界の課題を認め、協力を呼びかけたことは、中国セメント産業が大きな転換点にあることを示しています。
今後、中国セメント産業は「量の拡大」から「質の向上」へ、「個別企業の競争」から「業界全体の協調」へと、大きくパラダイムシフトしていくでしょう。
この変化は、日本企業にとってもビジネスチャンスとなります。中国市場の変化を正確に捉え、適切な戦略で臨むことが、成功の鍵となります。
HONG KONG JCBO LIMITED(香港佳士博有限公司)
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