
中国の建材調達価格を判断するうえで、完成品の見積価格だけでなく中国国内の基礎素材市況を追う重要性が高まっている。中国国家統計局が2026年9月3日に公表した8月下旬の流通分野重要生産財価格によると、普通ポルトランドセメントP.O 42.5バルクは1トン248.7元で8月中旬比0.2%下落、5/6mmフロート板ガラスは1トン1074.1元で同1.0%下落した。8月上旬の板ガラスは1095.6元、中旬は1084.6元だったため、月内を通じて弱含みが続いたことになる。一方、多結晶シリコンは8月下旬に1kg40.5元となり、中旬比14.4%上昇しており、中国製品なら一律に原料コストが下がっているわけではない。
背景には中国不動産市場の調整がある。国家統計局によると2026年1~7月の不動産開発投資は4兆3009億元で前年同期比19.2%減、住宅投資は19.1%減だった。新規着工面積も24.0%減少している。住宅新築需要の弱さはガラス、セメント、建具、住宅設備などの国内需要を抑える方向に働き、中国メーカーが輸出案件を重視する理由の一つになる。ただし、日本の買い手が『中国国内需要が弱いから大幅値引きできる』と単純に考えるのは危険だ。完成品価格には加工、人件費、金物、塗装、梱包、国内輸送、輸出諸費用が含まれ、原材料指数と同じ割合では動かない。
店舗内装会社やホテル開発会社が実務で行うべきなのは、見積を材料費、加工費、金物、表面処理、梱包、物流に可能な範囲で分解することである。ガラスなら厚み、強化・合わせ加工、Low-E仕様、穴加工、エッジ処理、寸法公差を明示する。セラミックや石材ならロット、色差、吸水率、寸法公差、表面仕上げを固定する。『同等品』だけで発注すると、価格低下局面ほどメーカー側が別グレードへ変更する余地が生まれる。
また、中国国内価格の下落は日本到着原価の下落を保証しない。海上運賃、為替、木枠梱包、港湾費用、輸入消費税、検品費まで含めたランドコストで比較する必要がある。特に大型ガラスや石材は破損率が利益を左右するため、FOB単価を数%下げることより梱包仕様と積載方法を改善した方が総原価を下げられる場合がある。日本企業にとって現在の中国市況は単なる『安値仕入れ』の機会ではなく、仕様を固定したうえで複数工場から再見積を取り、調達条件そのものを再設計する好機と見るべきだ。



