
中国でカウンター、壁面収納、ホテル客室家具、飲食店ベンチ、商品陳列什器などの造作家具を製作する場合、設計図を送れば工場が正しく作ってくれると考えるのは危険である。建築図面は空間と寸法を伝えるための資料であり、家具工場が必要とする製造条件のすべてを記載しているとは限らない。特に異なる材料を組み合わせる家具では、見た目が同じでも製法によって価格と耐久性が大きく変わる。
最低限必要なのは、基材、表面材、木口、金物、塗装、色、寸法公差、組立方法、梱包方法を整理した製作仕様書である。例えば「ウォールナット仕上げ」とだけ記載すると、無垢材、突板、メラミン化粧板、プリントシートのいずれでも外観を似せることができる。MDFについても密度や厚さが異なる。引出しレールや丁番もメーカーと品番を指定しなければ、工場が価格に合わせて代替品を選ぶ可能性がある。
店舗やホテルでは製作図承認の工程を設ける。日本側の設計図を基に中国工場がShop Drawingを作成し、設計者と施工会社が確認した後に量産へ進む。壁や柱に取り付ける家具では、現場寸法と製作寸法の責任分界を明確にする。建物完成前の設計寸法だけで製作すると、実測後に数ミリから数センチの誤差が発生し、現場で納まらないことがある。
また、日本の建築基準法ではホルムアルデヒド発散建築材料に使用制限があり、告示対象材料を使用した造り付け家具やキッチンキャビネットも対象となり得る。中国工場から板材の試験成績書を受け取るだけでなく、日本側で必要な等級・認定との関係を確認しなければならない。
検品では完成品だけを見るのでは遅い。板材カット後、塗装前、組立後など工程途中で中間検品を行えば、材料違いを早期に発見できる。量産前にGolden Sampleを1台確定し、色、質感、金物、寸法を基準品として保存する方法も有効だ。
造作家具を中国で安定生産する最大のポイントは、工場の職人技に任せることではなく、日本側が「何をもって合格とするか」を文章と図面で定義することである。仕様を細かく決めるほど見積比較も正確になり、安い理由と高い理由を判断できる。
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