
ホテル、店舗、飲食店で使用する造作家具を中国で製作する場合、最大のリスクは工場の製造能力不足ではなく、日本側の設計意図が量産仕様まで落とし込まれていないことにある。CIFF Shanghai WMF 2026では、板材加工、無垢材加工、表面処理、張り家具、スマート工場まで家具製造の一連の設備が展示され、中国家具工場の生産技術が高度化していることが確認できる。しかし、高性能な設備があっても、発注仕様が曖昧なら完成品の品質は安定しない。
造作家具の発注では、平面図や外観パースだけでなく、製作承認図が必要だ。板材の種類と厚さ、木口処理、化粧板品番、塗装色、艶、金物メーカー、蝶番の開き角度、引き出しレール、脚部の固定、コンセント位置、配線経路まで明記する。特に日本側で現場取付を行う家具は、壁、床、巾木との取り合い寸法が重要で、工場が独自判断でクリアランスを変更すると現場で収まらなくなる。
サンプル承認では、外観だけでなく分解して内部を確認した方がよい。見えない部分の木材、補強材、ビス本数、接着剤、下地処理は、量産時にコスト削減の対象となりやすいからだ。承認済みサンプルには署名や写真記録を残し、「量産品はこのサンプルと同等」と契約書や発注書に記載する。色については写真だけでは判断せず、現物色板を双方で保管する方法が安全である。
さらに、量産中の中間検品が重要になる。完成後に100台を検査して不具合を発見しても修正コストは高い。最初の5台程度が完成した段階で寸法、構造、塗装、金物、梱包を確認し、問題を工程内で修正する方が効率的だ。ホテル家具のように同一品を大量製作する案件では、初期不良がそのまま全数へ展開される危険がある。
中国OEMの利点は、設計自由度と製造価格にある。しかし、その利点を生かすためには、日本側が設計を「製造言語」へ変換する必要がある。造作家具では、工場の善意や経験に頼るのではなく、承認図、基準サンプル、中間検品、最終検品の4段階で品質を固定する仕組みを作ることが、最も再現性の高い方法となる。
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