
中国の家具・建材工場と取引を始める際、日本企業が最初に交渉しがちなのは単価と前金比率である。しかし継続的なOEM調達では、価格より先に仕様、変更管理、検品、支払い、知的財産のルールを決める必要がある。特に店舗什器やホテル家具は既製品と違い、買主の図面を基に製造するため、「何を納品すれば契約履行になるか」を書面化しなければ紛争時の判断基準がなくなる。
第一に、契約書へ図面番号、Revision、BOM、色見本、承認サンプルを紐付ける。第二に、材料変更や外注先変更を買主の書面承認制とする。第三に、出荷前検品の合格条件と、不合格時の再製作・補修・納期責任を定める。第四に、支払い条件を工程と連動させる。例えば前金、量産確認、出荷前検品合格、船積みという節目に分ければ、全額前払いより買主のリスクを抑えられる。
関税面ではRCEPも確認したい。日本税関によれば、RCEP特恵税率を利用するには、対象品目に特恵税率が設定されていること、貨物が協定上の原産品であること、必要な原産地証明手続きを行うことが必要である。中国については中国税関と中国国際貿易促進委員会が原産地証明書の発給機関として掲載されている。単に中国から船積みされたというだけで中国原産品になるわけではなく、非原産材料を使用する製品では品目別原産地規則の確認が必要だ。
決済通貨も契約条件である。人民元、米ドル、日本円のどれで価格を固定するかによって為替リスクの所在が変わる。中国国家外貨管理局は企業の為替リスク管理について、為替相場を予想して利益を得るのではなく、リスク中立の立場からエクスポージャーを把握し、コストの不確実性を下げる考え方を示している。長納期のホテル家具などでは見積から残金支払いまで数カ月あるため、為替変動を粗利計算へ入れておく必要がある。
最後が知財である。オリジナル家具や店舗什器では図面、ブランド、デザインの第三者提供や無断販売を禁止し、金型・治具の所有権も契約で定める。Alibaba Groupの知財保護プラットフォームは1688やAlibaba.comも対象としているが、プラットフォームの削除制度と工場との契約は別物である。中国OEMを安定した供給網にするには、単価交渉ではなく、技術・物流・税関・金融・知財を一つの取引設計として管理する必要がある。



