
ホテルのFF&E調達では、ベッドヘッド、ナイトテーブル、デスク、椅子、ミニバー収納、クローゼットなどを中国で一括製作することで、デザインの統一とコスト削減を図れる。しかし客室数が多いほど、一つの小さな仕様ミスが数十室、数百室に複製される。量産価格だけを比較するのではなく、量産前に基準室、いわゆるモックアップルームで仕様を確定させる工程が重要になる。
基準室では家具の色や形状だけでなく、ベッド周辺のコンセント位置、照明スイッチとの干渉、清掃機器が入る床下寸法、扉の開閉方向、スーツケース収納寸法など、実際の宿泊運営まで確認する。図面上では問題がなくても、家具、電気、内装仕上げが組み合わさると干渉が発生することがある。承認後は基準室で使用した材料サンプル、塗装色、金物、張地をマスターサンプルとして保存し、量産検品の基準にする。
中国工場への発注書では、部屋タイプごとの家具数量だけでなく、製品コードを設定することが有効だ。例えば客室Aのデスクと客室Bのデスクが似ていても寸法が異なる場合、製品名だけでは梱包や現場搬入で取り違えが起きる。外箱にホテル名、階、部屋タイプ、製品コード、箱番号を表示し、パッキングリストと対応させれば、日本到着後の仕分け作業を大幅に減らせる。
またホテルは開業後の補修を前提に考える必要がある。蝶番、レール、取手、照明部品、張地などの予備品を量産時に確保し、交換可能な構造にしておく。数年後に同じロットの化粧板や張地が廃番になる可能性もあるため、消耗しやすい材料は余剰在庫を検討したい。
木質材料を造り付けとして使用する場合は日本のホルムアルデヒド規制との関係を確認し、電気機器を組み込む場合は対象製品について電気用品安全法上の義務も確認する。ホテルFF&Eの中国調達は、単品家具の輸入ではなく、設計、法規、製造、物流、現場搬入を一体で管理するプロジェクトである。基準室で仕様を止め、量産変更を管理し、部屋単位で物流情報を紐付けることが、大規模案件ほど重要になる。


