
中国工場から『FOB上海10万ドル』の見積を受け取った時、その10万ドルだけを日本輸入時の課税価格と考えるのは正しくない。税関の関税評価制度では、原則として輸入貨物について現実に支払われた、または支払われるべき価格に、価格へ含まれていない加算要素を加えて課税価格を算出する。中国建材や家具を継続輸入する企業は、商品価格と税関上の課税価格を区別して管理する必要がある。
税関が示す主な加算要素には、輸入港までの運賃、保険料その他の運送関連費用、一定の仲介料・手数料、容器費、包装費などがある。さらに、買手が輸入貨物の生産に関連して無償または値引きして提供した材料、部品、工具、鋳型なども条件により加算対象となる。日本の設計会社が中国OEM工場へ金型を無償提供するケースや、日本側で購入した特殊金物を無償支給して家具へ組み込ませるケースでは、単純な工場請求額だけを見ないことが重要である。
店舗什器では日本側デザイナーが海外で作成した設計や意匠を製造に使用することもある。税関の加算要素資料には、輸入貨物の生産に必要とされた技術、設計、考案、工芸、意匠で本邦以外で開発されたものに関する取扱いも示されている。個別案件で加算対象になるかは契約や支払関係によって判断が必要なため、特殊な取引では輸入後ではなく事前に通関業者や税関へ相談したい。
実務上の対策は、発注関連費用を一つの案件台帳へ集約することである。商品代、金型費、サンプル費、設計費、梱包費、中国国内輸送、海上運賃、保険料、仲介手数料を記録し、それぞれ誰が誰へ支払ったかを残す。中国側インボイスに記載されない支払いがある場合も、税関評価上無関係とは限らない。契約書、送金記録、見積書、インボイスを関連付けて保存する。
家具では関税が無税となる品目も多いが、『関税ゼロだから課税価格はどうでもよい』とはならない。輸入時の消費税計算にも関係するため、正しい評価が必要である。また、同じコンテナに家具、照明、タイル、食器など複数HSコードの商品を積む場合は、運賃や保険を各品目へ合理的に配賦する必要が生じる。
中国調達では工場価格を下げる交渉に意識が集中しがちだが、日本到着後の税金まで含めて初めて総原価が確定する。見積段階から関税評価を意識して費用構造を整理しておけば、通関直前の追加確認や予想外の税負担を減らすことができる。




