
店舗、ホテル、マンションの造作家具を中国工場へ発注するとき、多くの日本企業は詳細図面と仕上げサンプルを渡せば仕様が固定されたと考えがちである。しかし量産トラブルの原因として見逃せないのが、図面に記載されていない材料や部品の変更だ。板材のメーカー、接着剤、丁番、スライドレール、塗料、内部補強材などは完成図だけでは特定できず、工場が「同等品」と判断して変更すると、耐久性、色、臭気、寸法安定性が変わる可能性がある。
対策の基本はBOM、すなわち部品・材料表を量産承認資料に含めることである。例えばホテルのテレビボードなら、基材の種類と厚さ、表面化粧材、エッジ材、接着剤、塗装仕様、脚部材料、金物メーカー、品番まで記録する。すべてをブランド指定する必要はないが、変更すると性能が変わる項目は明確にする。代替品を使う場合には、工場が事前に仕様書とサンプルを提出し、日本側の書面承認後に変更できるルールを契約へ入れる。
中国では家具用材料分類の国家標準GB/T 32445-2026が2026年7月2日に公布され、2027年2月1日に施行予定である。こうした標準化の進展は材料名称を整理する上で参考になるが、日本向け製品では中国規格への適合だけで十分とは限らない。特に造り付け家具やキッチンキャビネットなどは、日本の建築基準法のシックハウス対策との関係を確認する必要がある。国土交通省も、告示対象建築材料を使用した造り付け家具やキッチンキャビネット等が規制対象となることを示している。
検品では完成寸法だけでなく、BOMと現物の照合を行う。板材の印字、金物品番、塗料・接着剤の製造記録など、完成後に確認しにくいものは製造途中でチェックする必要がある。量産中間検品を入れる理由はここにある。完成後では内部材料を確認するために製品を破壊しなければならない場合があるからだ。
中国造作家具の価格競争力を生かすには、工場を信用するかしないかという議論ではなく、変更が起きても追跡できる仕組みを作ることが重要である。図面、BOM、承認サンプル、変更管理、工程検品を一つの品質管理体系として運用することで、日本の店舗・ホテル案件でも再現性の高い調達が可能になる。




