
中国からドア、ガラス、ハンドル、ヒンジ、錠前などを一式調達すると、国内で個別購入するより価格を抑えられる案件がある。一方で、施工後の不具合が発生した時に『どのメーカーのどの部品か分からない』という問題も起こりやすい。特にホテル客室や店舗ではドアの開閉回数が多く、ヒンジ、クローザー、錠前など消耗部品の交換性が運営コストを左右する。中国調達では完成品価格より部材構成を管理することが重要である。
発注時にはドア一式という一行の見積を避け、扉本体、枠、表面材、芯材、ガラス、ヒンジ、ハンドル、錠前、ドアクローザー、パッキン等をBOMとして整理する。金物にはメーカーと型番を付け、工場判断による『同等品』への変更を禁止する。中国のOEM工場では見積後に部品価格が上昇すると別サプライヤーへ切り替えることがあるため、量産前サンプルで承認した金物と出荷品が同じかを検品する。
ガラスについても『強化ガラス10mm』だけでは仕様として不足する。寸法、穴位置、面取り、エッジ処理、強化の有無、合わせ構成、色、表面処理などを図面へ記載する。ドアとガラスを別工場で作る場合は穴位置公差の責任範囲を明確にする。海外製作では現場で追加加工できない部材が多いため、日本で採寸した寸法と工場製作図の承認プロセスを設けることが重要だ。
防火性能が要求される場所ではさらに慎重な確認が必要となる。国土交通省が公開する建築基準法に基づく構造方法等の認定情報では、防火設備・特定防火設備について認定区分が示されている。一般ドアや一般ガラスの試験成績を持っていることと、日本で防火設備として使用できることは同義ではない。防火区画など法的性能が必要な箇所では、設計者が要求性能と認定仕様を確認し、認定範囲と異なる部材へ勝手に変更しないことが不可欠である。
ホテル案件では客室数の数%程度を目安に消耗金物の予備品を検討し、店舗では開業後に入手困難になりそうな特殊ハンドルや特注金物を余分に確保する方法がある。輸入後に一個だけ航空便で取り寄せると、部品価格より送料が高くなることもある。
中国のドア・金物産業は製品選択肢が多く、特注加工にも対応しやすい。しかし、安い『セット』を買うだけでは長期運用に向かない。製造時点から部材を識別し、日本の施工図、交換部品リスト、認定資料と紐付けて管理することで、中国調達の価格メリットを建物のライフサイクル全体へつなげることができる。




