
ホテル向け家具は、中国調達との相性が良い分野の一つである。ベッドヘッド、ナイトテーブル、デスク、テレビボード、クローゼット、ミニバー、洗面台などを客室タイプごとに標準化すれば、中国工場でまとまった数量を生産できる。しかし、一度量産を開始すると同じ不具合が数十室、数百室へ拡大するため、一般の店舗家具以上に量産前確認が重要になる。
最も有効なのが、標準客室一室分のモックアップを量産前に完成させる方法だ。確認項目の第一は寸法。家具単体の寸法だけでなく、壁、巾木、コンセント、スイッチ、カーテン、ベッド、冷蔵庫との取り合いを見る。第二は扉や引き出しの動作で、ヒンジ角度やソフトクローズの速度も確認する。第三は照明で、家具組み込みLEDは色温度、演色性、調光方式、電源位置を確認する。
第四は仕上げの再現性である。突板、メラミン、石材、金属、塗装を組み合わせるホテル家具では、サンプル単体では良く見えても一室に並べると色調が合わないことがある。承認サンプルを「マスターサンプル」として工場に封印保管し、日本側にも同一品を置くと量産検品が容易になる。第五は清掃性で、客室家具は日常的に拭き掃除されるため、指紋、薬剤、擦れに対する確認も必要だ。
第六は交換性である。ホテルでは開業後の補修が必ず発生する。特殊な取手やヒンジ、LEDドライバーを使用する場合、数年後に同じ部品が入手できない可能性があるため、予備部品を初回納品に含める。第七は梱包設計で、完成品をそのまま輸送するか、ノックダウン方式にするかでコンテナ積載効率と日本側施工工数が変わる。
さらに木質系造作家具を日本の居室内で固定して使用する場合、使用材料によっては建築基準法のホルムアルデヒド規制との関係を確認する必要がある。国土交通省は、告示対象建築材料を使用した造り付け家具やキッチンキャビネットも規制対象になり得ることを示している。
ホテル家具調達では、モックアップ費用を削ることが必ずしもコスト削減にならない。一室で問題を発見して修正する費用と、100室納品後に修正する費用は桁が違う。中国工場を活用するほど「量産前に止める仕組み」がプロジェクト全体の利益を守る。
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